中村一賞
風のうたよみ
制作者:MATHRAX
作品概要:
「風のうたよみ」は、人と自然とデジタルとの共存をテーマにした体験型のインスタレーションです。木々の豊かなガーデンに、さまざまな種類の鳥の木彫が配置されており、体験者がこの木彫をなでることによって鳥がさえずります。音は、自然環境の録音や鳥の鳴き声の特徴的な波形をデジタル加工したもので、鳥の声をきっかけにガーデンの中をサラウンドに音の風が通り過ぎてゆくような感覚を体験できます。体験者の「ふれる」行為が「音」となり、人や環境とつながっていくことで、それぞれに新しい世界をイメージさせる作品です。
この鳥の木彫を目の前にすると、その佇まいから、引き寄せられるようにその背中に手が運ばれる。なでてみると鳥がさえずり、すっと肩の力がぬけてやさしい気持ちになる。
木彫の鳥の鳴き声は、展示会場である六甲山で録音された自然の環境音を利用し、ライトアップの光の色も、会場中庭にある植物の色みをデータとして利用されている。鳥たちはまるでそこに生まれ育ったかのように自然に溶け込み、その鳥に触れた体験者たちもまた自然に溶け込んでいく。私たちを分離させているあらゆる境界線が消えて自然との一体感を味わえる作品。作者のやさしい世界観が伝わってくる。
中村 一