ものづくり文化展とは
私たちは、これからのものづくりは、生産設備による画一的な「製品」づくりから、繊細な感性を生かした「作品」づくりへ、そして、同じ製品を大量に「製造」する時代から、これまでになかった新しいものを次々と生み出す「創造」へと変わっていくだろうと考えています。
私たちは、ものづくり文化展を通じて、その中心的役割を担うであろう小さなつくり手のお客様に、発表の場や交流の場を提供し、互いが刺激を受け合ったり、コミュニティーが生まれることを促進させ、さらには、そうしたものづくりに挑戦するつくり手を励まし勇気づけ、また、社会的にも尊敬され憧れられるような存在となるよう支援してまいります。
そのことによって、小さなつくり手たちの強みが生かされ、私たちの社会がより豊かになっていくことを目指します。
ものづくり文化展審査員
※五十音順、敬称略
橋本 俊行 & 岩崎 修
株式会社aircord
aircordは、映像/ライティング/デバイス/ロボティクスなどテクノロジーを用いて開発やデザイン、プロデュースを行うクリエイティブチーム。Lyrick Speakerのプロトタイピング、Grid Vrick、電気味覚フォーク、LED装置などデバイス開発も多数行う。受賞歴は、Cannes Lionsゴールド、文化庁メディア芸術祭優秀賞、ADFESTグランプリ、D&ADイエロー・ペンシルなど。
http://www.aircord.co.jp/
土佐 信道
明和電機 代表取締役社長
芸術ユニット「明和電機」をプロデュース。青い作業服を着用し作品を「製品」、ライブを「製品デモンストレーション」と呼ぶなど、日本の高度経済成長を支えた中小企業のスタイルで、様々なナンセンスマシーンを開発しライブや展覧会、商品開発など、国内のみならず広く海外でも発表。音符の形の電子楽器「オタマトーン」など制作多数。
http://www.maywadenki.com/
中村 一
株式会社オリジナルマインド社長
1997年、オリジナルマインドを創業。創業以来20年間一貫して個人のお客様向けにメカトロニクス関連の部品や組み立てキットを提供し続け、今日に至る。デスクトップ型CNCフライス「KitMillシリーズ」を主力製品とし、最近では卓上折り曲げ機や手動射出成形機など、幅広く製品を次々に生み出し、個人のものづくりの可能性を広げている。
http://www.originalmind.co.jp
ものづくりは感性価値の時代へ
人工知能によるライン生産が加速する傍ら、小さなつくり手たちのものづくりは年を追うごとに、独創的でクリエイティビティに溢れたものに変化してきています。以前までは大企業でなければ作れなかったようなモノを、個人が自宅の設備だけで自らのアイデアを元にカタチにできるようになってきたためです。より自由な作品制作が可能になったことで、数値化できる価値のみならず「数値化できない価値=感性価値」をものづくりは期待されるようになってきました。ものづくりとクリエイティブの境界線は曖昧になり、つくり手も「職人」から「クリエイター」へと変わりつつあリます。ものづくり文化展には新時代を担う「小さなつくり手」たちの作品が毎年多く集います。ぜひあなたの自慢の作品でご応募ください。
賞と賞品
最優秀賞 | 1点 | 賞状 | 賞金10万円 | 記念品 |
優秀賞 | 1点 | 賞状 | 賞金 5万円 | 記念品 |
入選 | 数点 | 賞状 | 賞金 1万円 | 記念品 |
審査員賞
aircord賞 | 1点 | 賞状 | 賞金 5万円 | 記念品 |
明和電機賞 | 1点 | 賞状 | 賞金 5万円 | 記念品 |
スポンサー賞
AUTODESK賞 | 1点 | 賞状 | 賞金 1万円 | 記念品 |
DMM.make AKIBA賞 | 1点 | 賞状 | 賞金 1万円 | 記念品 |
FabCafe賞 | 1点 | 賞状 | 賞金 1万円 | 記念品 |
FabLab Setagaya at IID賞 | 1点 | 賞状 | 賞金 1万円 | 記念品 |
MONO賞 | 1点 | 賞状 | 賞金 1万円 | 記念品 |
※ものづくり文化展2017から賞金はポイントから現金となりました。
ものづくり文化展2017 審査員総評
※五十音順、敬称略
橋本 俊行 & 岩崎 修
株式会社aircord
今回の審査にあたっては、誰かのために作る、というより自分の造りたい理想のものを形にした結果としての作品が多数集まって来ているところが、見ているだけでもとても楽しかったです。また、PC上のデジタルデザインツールだけでは見えてこない、自分の手を動かして形にしていく過程を経て初めて得られるだろう作品が多数あったところも印象的でした。
ただ、もっと人に見られるデザインを意識した上で、アウトプットにとことんこだわる作品も見てみたかったのも正直な所です。次回はそのような観点で制作された作品が更に多く応募される事を期待しています。
土佐 信道
明和電機 代表取締役社長
びっくりするような設計力と加工精度のある作品と、どこか詩的で「人間ってなんだろう?」と逆に問いかけてくる機械の作品がありました。どちらも魅力的ですが、今回は後者の方を僕はえらびました。
中村 一
株式会社オリジナルマインド社長
今回は開催時期や募集期間を変更したことから、作品が例年より集まらないのではないかと心配していましたが、過去最多の90作品が集まり、本当に嬉しく思っております。
みなさんは最近のものづくり産業の動きを見てどのように感じていますでしょうか。私は「人の心や身体に直接働きかける製品が増えてきた」と感じています。
日本では今、ロボット産業が活発化してきている中で、人の感情を理解できるロボットや、人の意志でコントロールできるロボットスーツなどが生まれてきています。これらの多くは、人の心を癒したり、身体機能を補強したり、ビッグデータを知識化するといったような人間自体に直接働きかけるものです。ロボットが「単体」のものとして開発されてきていたこれまでとは異なり、人とロボットが「共存し補い合う」ようなシフトが起こってきているように思います。つまり、人間の外側に置かれていた開発テーマが、ここ最近のものづくりでは「人間の内側へ」とアプローチをかけるような開発が主流になっているのです。今後この流れは加速してゆき、やがて脳の神経細胞をチップに置き換えることができたり、身体の機能をサイボーグに置き換えることもできてしまうかも知れません。
「サピエンス全史」の著者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏は“有機体の生命は、無機体の生命に置き換わるかもしれない”と語りました。この言葉を借りるならば、開発対象が人間の外側から内側にシフトしていく今の流れは、究極的にロボットが「人間そのもの」になるということを意味しているようにも思います。そうした「ポスト身体社会」ともいうべき社会へと向かう時代の流れの中で、私たち小さなつくり手たちは、今後どのような使命感でものを生み出していくのでしょう。…そんなことを考えながら、今回ご応募いただいたみなさんの独創的な作品を見ていました。するとなぜだか「天空の城ラピュタ/スタジオジブリ」の中でシータが物語後半で語った言葉を思い浮かべている自分に気がついたのです。
“今はラピュタがなぜ滅びたのか、私よくわかる。
ゴンドアの谷の歌にあるもの。
「土に根をおろし、風と共に生きよう。種と共に冬を越え、鳥と共に春を歌おう」
どんなに恐ろしい武器を持っても
沢山のかわいそうなロボットを操っても
土から離れては生きられないのよ!”
ものづくり文化展にご応募いただいた作品に私は心温まるような安心感を覚えます。無機質なのに作者の心が宿っているようなそんな温かさです。シータの言葉を借りていうならば、「土から離れていない何か」を感じるからなのかもしれません。
私たちは、テクノロジーの目覚ましい進歩の中で、人間らしさを見失わないことをより試されるフェーズにこれから入っていくでしょう。人工知能やロボットが次第に生活の中に浸透していくに比例して、自分たち人間の「らしさ」をより深く問うことになると思うからです。小さなつくり手たちの作品には、今後のそうした時代に最も必要とされるであろうとても重要な価値があるように感じました。
今社会の潮流は、大手企業が莫大な資金と労力をかけて人工知能やロボット、通信インフラを進化させていく流れにあります。そうした働きかけによって、やがて私たちとロボットとの境界線も薄まっていくでしょう。しかし、私たち人間はどこまで行っても有機体であり、ロボットはどこまで行っても無機体です。
大手企業による最先端の技術開発が進む一方で、私たち小さなつくり手には、そうした企業とは逆にものづくりを通して「人間らしさ」に答える何かを生み出すという重要な役割があるのかも知れません。
ものづくり文化展スポンサー
※五十音順、敬称略
AUTODESK
3Dデザインソフトウェアを提供する世界的な企業。製造、建築、土木、メディア&エンターテインメント産業を中心に、多岐にわたる顧客がアイデアの具現化や視覚化、シミュレーションにオートデスクのソフトウェアを使用しています。クラウドベースの高機能3D-CAD「Fusion360」には強力なCAMが搭載されており、そこから出力されたNCデータでKitMillを動かすことができます。詳しくはこちら。
Webページ
http://www.autodesk.co.jp/
DMM.make AKIBA
DMM.make AKIBAは、ハードウェア開発に必要な最新の機材を取り揃えた「DMM.make AKIBA Studio」、シェアオフィスやイベントスペースなどビジネスの拠点として利用できる「DMM.make AKIBA Base」で構成された、ハードウェア開発をトータルでサポートする総合型のモノづくり施設です。
KitMill SR200、アルマイトキット 彩、Bender Black 30が設置されています。
Webページ
http://make.dmm.com/
FabCafe
FabCafeは「デジタルものづくりカフェ」でありながら、「ローカルなデザインコミュニティ」でもあり、「グローバルなビジネスネットワーク」でもあります。FabCafeから生まれるクリエイティブコミュニティから、次世代のものづくりを変える何かが生まれると信じています。
Webページ
http://fabcafe.com/tokyo/
FabLab Setagaya at IID
FabLab Setagaya at IIDは、3Dプリンター、レーザーカッター、CNC、3Dスキャナーなどのデジタルファブリケーション機器を設置した、個人から企業まで誰でも使える地域に開かれたものづくりスペースです。
KitMill RD420が設置されています。
Webページ
http://fablabsetagaya.com/
MONO
MONOは、モノづくりのプロジェクトを創出し、企業、専門分野、国の枠を超えてオープンイノベーション遂行を通して、社会の仕組みを変え、起業家支援、ものづくり産業の国際化と振興を図る社会企業(ソーシャルエンタープライズ)です。お互いの得意分野をシェアしそれぞれの課題を解決に導くインキュベーションオフィスとしての役割を果たします。
KitMill BT100、KitMill Qt100、KitMill RD300が設置されています。
Webページ
http://mono.jpn.com/
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