【2017年度ものづくり文化展】優秀賞&明和電気賞受賞者インタビュー
2017.12.27
2017年度ものづくり文化展優秀賞&明和電気賞受賞作品『文字書き計時器 time castle』
前作の『書き時計 plock』からサイズ、機能が小型化され、歯車がぎっちり詰まった『文字書き計時器 time castle』。独自に開発された筆記機構に加え、ユニークかつ合理的な動きをする「テオヤンセン機構」や「非円形歯車」などが使用されている。複雑な機構が噛み合い、0から始まり1、2、3と「3分間」を壮大に計測する。
見たことないものを作りたというのが一番強い
『文字書き計時器 time castle』の作者の鈴木 完吾さん
1993年生まれ、宮城県出身。
東北芸術工科大学にてプロダクトデザインを専攻。
同大の卒業制作では時刻を筆記するからくり時計『書き時計 plock』を制作。SNSに投稿した動画が大きな反響を呼んだ。
――― 優秀賞と明和電機賞のW受賞ですね。
どこまでいけるのかと思っていましたが、優秀賞を取ることができて、しかも明和電機賞も頂くことができて率直に嬉しいです。
――― 受賞作の制作の経緯について、聞かせてください。
『文字書き計時器』は『書き時計』を作った1年後に制作しました。『書き時計』で構造的に難しかった点や加工精度でうまくいかなかった点などを改善したものを作ることができないかと考えたからです。『書き時計』はサイズや動きが大きくて、簡単に使えるものではありません。また、内部の摩耗も問題でした。そこで、小型化し、使うときだけ動かすような計時器(タイマー)が作れないかと思い、制作しました。
――― 作品制作の軸になっている想いは。
んー...難しいですね(笑)。ぼくのなかで既視感のないものというか、見たことないものを作りたいというのが一番強くて、例えば時計をつくるといって腕時計を作ると、腕時計としか見られないと思うんです。時計という枠に収まるものを作ると、どうしてもその枠に収められてしまう。それはそれで突き詰めていくと何かあるとは思うんですが、ぼくはそれとは別に、枠のない作品を作りたいと思っています。それならではの形状をデザインから加工まで、全て自分で作ることができるっていうのはすごくおもしろいかなと思っているんです。
――― 受賞作制作の際に留意したことは。
既視感の無いような形状や動きをするように設計しました。内部のデッドスペースを最小限に抑えて、動きのおもしろい機構は外側に配置することでコンパクトながら「3分」をより楽しめるようにしました。
――― カラクリの複雑で難しい機構はどのようにして設計していますか?
設計の殆どはCAD上で行い、初めて用いる機構などはプロトタイプを作りながら考えています。設計は最初に実現したい動きを考えて、その動きを紐解きながら単純な機構に分けていき、それらを組み合わせることで複雑なカラクリを作り上げています。
『文字書き計時器』の場合は、断続的な動きをさせる機構(ゼネバ機構やロック解除機構)、速度を変化させる機構(歯車の回転の減速・加速や非円形歯車)、自由な動きをさせる機構(カムやリンク機構)があり、干渉しないよう、うまくつじつまを合わせながら設計しました。
――― 受賞作の制作を通じて学んだことは。
今回の『文字書き計時器』の制作は、私がCNCフライスを使用しての初めての制作でした。書き時計を制作した時は木材を糸鋸で削っていましたが、今回はそれ以上に精度のよい設計・切削をすることができました。制作を通じて、ものづくりの経験値が上がったのが自分でも実感できています。今後も、できることをどんどん増やしつつ、アイデアを思い通りの形にできるよう励んでいきたいです。
――― これからどんな作品を作っていきたいですか?
加工とか、そいういう制作の経験値を上げていって、からくり時計というカテゴリを自分の中で広げていきたいと考えていて、今よりももっと小さく、持ち運べるような素材にしていけたらなと思っています。最近は金属もやっていて、それも合わせられたらおもしろいなと思っています。
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